Open IoT 教育シンポジウムに参加 [2018/3/8,9]

2018/3/8,9と京都であった東洋大学坂村先生主導の「Open IoT教育シンポジウム」に行ってきた.

本質は,もうすぐIEEEに登録されるμT-Kernel2.0ベースのRTOSシステム+6LowPANの啓蒙活動の一環で,文部科学省「成長分野をささえる情報技術人材の育成拠点の形成」として,社会人再教育プログラムの実施.
今回は,その教育カリキュラムを構成する各分野の先生方による,それぞれの重点ポイントの解説.
機械学習分野は,基礎理論からみっちり鍛えられ,ロボットの演習もあるとか,IoT-Engineによるシステム開発では,RTOSの基本の考えをたたき込まれ,これもロボットカーのプログラムも実習としてするとのこと.

おそらく問題提起として,
これまでの組込み屋が,新しいIoTデバイスの開発や機械学習の応用に持てあましてしまっている原因を,知識や基礎学力が無いからとしたのだろう.

確かにそういう理由も無いという訳ではないだろう.
この20年のエレクトロニクスの高度成長において,基礎的な技術力より,組み合わせベースの応用技術や改善に注力してしまったのも事実.

ただ,現場にずっと居た立場からして,それだけでもないと思ったりする.
IoTの先導者がいて,メディアでもIoT、AIがもてはやされているのに,なかなか一般的に流行らないのは,基礎技術力以外の原因もありそうだ.

1つの原因としては,単に人を動かすぐらいのレベルの需要が無いのではないか.
それなりのモノを作ればそれなりに売れていた以前と比べて,今は,いいモノを創っても売れるかどうかはわからない.
人がリアルな世界で生きている限り,モノが売れることは事実だが,どこで製造されたどんなモノが売れるかは良くわからない.

あと,向かっている方向性の疑問.
なぜか,もう10年以上前の,ガラ携全盛時代に,ガラ携がピークになってきた時に,
・ガラ携の進化は新しい機能を追加すること (財布,TVとか追加)
・キャリア・サーバサイドのアプリに期待しよう (i-mode, EZwebとか)
・巨大なアプリの短期間での開発のために,RTOSでUIやアプリを開発できるエンジニアをドンドン増やそう
・携帯電話の開発を進めるには,3Gとか電波のことを良く知っておかないといけない
ということで,教育をしていくような流れがあったと思う.
特に,RTOSベースのソフト開発は,メモリプロテクションが無い(軽量な)システムにおいて,巨大ソフトウェアのバグは,システム全体に波及するので,信頼性の低下と開発速度の低下,検査工程の膨大化とか,凄いことになっていた様だ.

結局ガラ携戦争は,いわゆる「ユーザ体験」ベースで,Unix/Linuxベースのスマホに取って代わられて,機能やキャリア主導のアプリ,RTOS開発技術,電波特性とかに重きを置くのではなく,ちょっと進化したUIやマルチセッション・ネットワークによるアプリケーションの常時並列稼動,そして,音声→SMS→メールから進化した,SNSへと移り変わってきたような気がする(この変化をPC化というのは若干語弊があるだろう).
日本以外のメディアプロセッサを散々作って,売り先が無かった半導体屋に取っても,高機能,高性能なSoCを要求するスマホ向け半導体は大歓迎だっただろう.

とはいえ,今回のOpen IoTカリキュラムは,
・難しいこと,セキュリティに係わることは,クラウド・サーバに任せる
・エッジデバイスは軽量化する(Processの概念も不要)
・通信は6LowPANでやる
・基本をちゃんとわかった機械学習(Deep Learningより「ベイズの定理」が重要)をベースとする
とTRON色満載の特色で,閉塞した今の状況を打破させようとしている気迫も感じるような気がする.

さらにリクエストするとしたら,μT-Kernelの説明の時にあった,ネットにつながるスピーカーとか家電スイッチとかの連携を構成するエージェント?駆動機構をどう作って行くのかが是非知りたい.
WebアプリとしてLチカみたいにスイッチON/OFFするのではなく,もっと高度な判断と高信頼性の動作の実現とか,IoT連携として重要なポイントは是非対象にしてもらいたいと思った.